境界を結ぶ魔女 Episode 0

同じ月を見上げているはずなのに、
どこか少しだけ
いつもと違う気がする夜がある。

まるで、
夢と現実の境界が
やわらぐような夜。

「Still Moonって、
どういう意味?」

そう聞かれることがある。

静かな月?
止まった夜?

もちろん、
それも間違いじゃない。

だけど、
Still Moonという名前の奥には
もう少し深い意味がある。

満ちる月と
欠けていく月。

それは、

凪月。
境界の月。

Still Moonは、
そんな“あわい”から生まれた世界だ。

私は昔から
なぜか栴檀の木に惹かれていた。

春になると
薄紫の花を咲かせる木。

どこか懐かしく、
少し儚く、

見上げるたびに
遠い記憶が
胸の奥で揺れるような気がする木だった。

栴檀の花言葉は、
「意見の相違」
そして、「記憶」

そう、
違うのだ。
そこには境界がある。

境界は本来、
分けるためのもの。

結界も
内と外を隔てるために
生まれたものだ。

だけど
違うからこそ
存在できる。

違うからこそ
愛しい。

夜と朝。
闇と光。
陰と陽。

そして
あなたとわたし。

どちらか一方だけでは、
世界は成り立たない。

すべては、
違うもの同士が
境界を持つからこそ
ようやく形を成すのだ。

それは決して
拒絶するためのものじゃない。

互いを壊さず、
共に在るための優しい境界線だ。

──栴檀の木の下で、
魔女は静かに境界を結ぶ──

人は
夢だけでは、
沈んでしまう。

現実だけでは、
枯れてしまう。

記憶に呑まれてしまわないように。

今をちゃんと生きられるように。

そして再び、
朝へと帰ってこられるように。

絵本なのか、
物語なのか、
お守りなのか、
音楽なのか。

どこかに属しているようで、
どこにも属していない。

だからこそ、
その曖昧な境界の中に、
微かな灯りを探しているのかもしれない。

再び満ちる
ブルームーンの夜。

同じ場所へ戻ってきたようで、
もう違う景色の中にいる。

オワリとハジマリは
きっとひとつの輪ではなく、
螺旋なのだから。

欠けた月が、
また満ちていくように。

夢と現実が、
互いを見失わないように。

Still Moonもまた、
ゆるやかに巡り続ける世界でありたい。

今日も魔女たちは
矛盾や葛藤を抱えながら、
それでも
栴檀の木の下で境界を結ぶ。

それは、
特別な誰かの話じゃない。

これは
あなたの中に息づく
結びの魔女の物語だ。

今宵も、
静かな月が
あなたを照らしますように。

Blue Moon / 2026.05.31

境界を結ぶ魔女
何も解決なんかしない。だけど、たしかにそこに私がいる。Episode 0境界を結ぶ魔女 I'm here. Still Gray.